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工藤会トップは「父親のような存在」「好き」 ナンバー2が証言した野村被告への“心酔” 福岡高裁

2023/09/27 18:50

4つの市民襲撃事件で殺人などの罪に問われ、1審で死刑判決を受けた特定危険指定暴力団・五代目工藤会トップの野村悟被告(76)と無期懲役の判決を受けたナンバー2の田上不美夫被告(67)に対する控訴審の第2回公判が、27日、福岡高裁で開かれました。

証言台に立った田上被告は、1審での無罪主張から一転、2つの事件について犯行を指示したことを自らの口で語り、関与を認めました。

また野村被告へ抱いている自らの心情について「父親のような存在です。一言でいえば『好き』」と語りました。
<弁護側の被告人質問(田上被告)>
Q.「あなたが関与した事件は?」
A.「看護師事件と歯科医師事件です」

Q.「どう関与した?」
A.「傷つけるように指示をしました」

初めて本人が口にした事件への関与。殺人や組織犯罪処罰法違反などの罪に問われ、1審で無期懲役の判決を受けた工藤会ナンバー2で会長の田上不美夫被告です。

27日に福岡高裁で開かれた控訴審の第二回公判で、注目の被告人質問が行われました。

<弁護側の被告人質問より>
田上被告「立証責任は検察にある。しゃべる必要がないと思っていました」
起訴状などによりますと、工藤会トップで総裁の野村悟被告(76)とナンバー2で会長の田上不美夫被告(67)の2人は共謀し、大型港湾工事などへの影響力を持っていたといわれた元漁協組合長・梶原国弘さんが射殺された事件(1998年)のほか、福岡県警元警部銃撃事件(2012年)、看護師刺傷事件(2013年)、歯科医師刺傷事件(2014年)の4つの市民襲撃事件を起こしたとされています。
田上被告らは一貫して全面無罪主張を続け、自らの潔白をアピールしました。

<1審の被告人質問より(看護師事件について)>
Q.「工藤会は組員が“カタギ(一般人)”に迷惑をかけることを認めているのか?」
A.「認めてはおりません」

Q.「組員にカタギの人に迷惑をかけるなと指導していた?」
A.「毎月していました」
ところがー

◆TNC記者(1審判決公判当日)
「主文あと回しです」

2021年8月、1審の福岡地裁は、犯行を裏付ける直接的証拠がない中、野村被告を4事件の「首謀者」と認定。野村被告に死刑、田上被告に無期懲役を言い渡しました。
野村被告と田上被告は判決を不服として控訴。9月13日に始まった控訴審では、冒頭からこれまでの主張を大きく覆す発言が飛び出しました。

<控訴審 初公判より>
弁護側「看護師に少し痛い思いをさせる必要があるとして、『ほおをはつって(傷つけて)、尻を刺せ、大きなけがをさせるなよ』と指示して犯行を実行させた」

弁護側は、4つの事件のうち2つの事件について、田上被告が当時組織ナンバー3の菊地敬吾被告に“独断で犯行を指示した”と主張を変えたのです。さらに弁護側は菊地被告が個人的な恨みで元警部銃撃を指示したと主張。元漁協組合長が射殺された事件については元工藤会幹部たちが独断で実行したと訴えました。
そして27日に行われた控訴審の被告人質問。田上被告は一審の全面無罪主張を変更した理由について、野村被告に下された死刑判決が理由だと語りました。

<弁護側の被告人質問(田上被告)>
A.「びっくりしました。無罪判決が出ると思っていました。何で総裁が共犯になるのかと思いました。なんで死刑なのか。私も否認すれば(無罪主張が)通ると思ってました。総裁まで巻き込んで本当に申し訳ない気持ちです」

Q.「家族は?」
A.「泣いていました。『お父さんはそんなことしてないよね』って。やるせない恥ずかしいです。情けない。事実は話したくなかった」
さらに田上被告は、野村被告へ抱いている自らの心情を語りました。

Q.「総裁はどんな存在?」
A.「父親のような存在です。一言でいえば『好き』というような存在」

Q.「どんな人?」
A.「人に暴力をふるうようなこともなければ、徳で人を引っ張っていくような人です。五代目工藤会を譲っていただいた方です」

野村被告への心酔を法廷で口にした田上被告。
関与を認めた看護師刺傷事件についても語り出しました。

<弁護側の被告人質問(田上被告、看護師事件について)>
Q.「どうして指示をした?」
A.「かっときました。総裁を侮辱してからかった」

事件のきっかけになったとされるのは、2012年に野村被告が美容整形クリニックで受けた下腹部の手術と顔と下腹部のレーザー脱毛の施術です。クリニックに勤めていた被害者の女性看護師は、野村被告が脱毛レーザーを痛がった際「野村さんでも痛いのか、刺青に比べたら痛くないでしょ」と言ったといいます。

<弁護側の被告人質問(田上被告、看護師事件について)>
Q.「この話を聞いて?」
A.「刺青を入れたことのないオバハンがそんなこと言うのね、とかっときました」
Q.「誰に指示を?」
A.「菊地敬吾に指示をしました」

Q.「なぜ頬をはつれ(切りつけろ)と?」
A.「見せしめと思って。一生傷が残って恥ずかしい思いをしたらいいと思いました」

Q.「総裁の指示では?」
A.「ありません」
さらに被告人質問で田上被告は、自らが推していた人物が漁協の代表理事に選ばれなかったことから亡くなった梶原さんの息子に恨みを抱き、菊地被告に犯行を指示した、と語りました。

<弁護側の被告人質問(田上被告、歯科医師事件について)>
A.「家族を痛めつけようと思いました。『お尻を刺せ』と指示をしました」
そして田上被告は、2つの襲撃事件を実行し無期などの懲役刑を受けた組員たちに謝罪しました。

<弁護側の被告人質問(田上被告)>
A.「生きて帰れるか、帰れないかの判決を受けてますし、その人にも家族がいるから本当に申し訳ないと思っています。正直言うて後悔しました。これだけの人間を長い懲役にさせたことを後悔しました。すべて私の責任だと思います」
そして、話は工藤会の今後についても及びました。

<弁護側の被告人質問(田上被告)>
Q.「工藤会のこれからは?」
A.「私が作った会ではありませんので、しかるべき人間に譲りたいと思います。工藤会はなくすつもりはありません。一人でも二人でも帰ってきてほしい。普通の人間に言ってもわかりませんけど、こういう世界じゃないと生きられない人間もいる。暴力団=弱者だと思います」

Q.「あなたの最期はどうなると思ってますか?」
A.「獄中死と思ってます」

一方で、田上被告は元漁協組合長射殺事件と元警部銃撃事件については関与を否定しました。
そして27日午後からは「工藤会」のトップ・野村被告が証言台に立ち、改めて4事件への関与を否定しました。

<弁護側の被告人質問(野村被告)>
Q.「襲撃を指示したことは?」
A.「ありません」

Q.「襲撃を聞いたことは?」
A.「聞いたこともありません」

Q.「死刑をまぬかれるために嘘をついているということは?」
A.「そんなことありません」
さらに看護師事件と歯科医師事件を独断で起こしたと主張した田上被告について問われると-。

<弁護側の被告人質問(野村被告)>
Q.「2件の事件について、田上さんが指示したことを話しましたが、どう思いますか?」
A.「田上も私の事を思って、私のことをものすごく思いすぎる人間ですから、すまんな、と」

Q.「看護師に対しては?」
A.「申し訳ないな、と思いよります。ごめんね、とまた会って謝罪したいくらいです」

Q.「歯科医師に対しては?」
A.「本当に申し訳ないと思います」

Q.「裁判官に言いたいことはありますか?」
A.「本当に申し訳ありませんでした。公正な判断をお願いしたいと思います」

さらに野村被告は総裁という立場を今後、工藤会からなくし、工藤会との関係を断ち切ると話しました。そして検察側に「むちゃくちゃむごいことをしよるんですよ」と述べました。

野村被告の死刑判決を回避する狙いがあるともとれる大きな主張の変更。裁判所が今後これをどう判断するのか注目されます。

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