2024/10/31 10:30
クイーンビートル浸水隠ぺい JR九州高速船が国に改善報告書を提出 「報告すれば運航停止の指示は必至」「疑義はあっても会社の指示には従わざるを得ない」
事件・事故
2024/10/31 17:00
日韓を結ぶ高速船「クイーンビートル」の浸水隠ぺい事件で、船を運航するJR九州の子会社は10月31日、再発防止に向けた改善報告書を国に提出しました。
クイーンビートルをめぐっては、運航会社のJR九州高速船が、船体の船首部分への浸水を把握しながら3カ月以上も国に必要な報告を行わず、センサーが作動しないように位置をずらしたり、航海日誌に「問題なし」などと記載してデータを改ざんしたりして運航を続けていたことが8月に発覚しました。
事態を重く見た国土交通大臣は、「輸送の安全確保に関する命令」や管理者の解任命令を出したほか、福岡海上保安部が船舶安全法違反などの疑いで捜査を進めています。
JR九州高速船と親会社・JR九州は記者会見を開き、31日、国に改善報告書を提出したこと、安全統括管理者と運航管理者を解任し新たな担当者を選任したことを明らかにしました。
報告書では、今後の改善策として、安全性向上を推進する新たな部署の設置や、全社員を対象に法令順守を徹底させるための研修を行うことのほか、JR九州による管理を強化するとしています。
一方、クイーンビートルの運休は少なくとも年内は続く見通しだということです。
改善報告書によると、「浸水隠しの原因」と「再発防止のための施策」について書かれた主な内容は以下の通りです。
<浸水隠しの原因>
・当時の社長は、浸水の報告をせず別帳簿に記録する等の対応について、船員経験が長い安全統括管理者や運航管理者からの「運航の安全には支障しない」「報告をすれば運航停止の指示は必至である」との意見を聞き、これを認める判断をした。
・その背景には、運休時の予約キャンセル対応において営業社員に負担をかけたくないとの思いもあった。
・安全統括管理者は、浸水を報告せず運航を継続するという運航管理者の意見に同調した。安全統括管理者の考えは「浸水量は船体の規模からすると非常に軽微であり、船首区画が浸水しても安全運航に支障はない」という、自身の技術的な根拠と判断のみによるもので、法令遵守の意識は希薄であったため、本来すべき意見具申ができなかった。
・運航管理者は、浸水が継続して発生しているにも関わらず、クラック(船体のひび割れや亀裂のこと)を疑わず、あるいはクラックがあったとしても喫水線(船が水上に浮かんでいるときの水面と船体が交わる線)より上だと推測し、経過観察だけでよいと考えた。また安全統括管理者と同様に、安全運航に支障はないという考えとともに、法令遵守の意識が希薄であり、報告をせずに運航を継続するという判断に至った。
・各船長は、安全運航に支障はないとの考え、法令に関わる部分は安全統括管理者や運航管理者などの陸上側が判断するものという考え、あるいは疑義はあっても会社の指示には従わざるを得ないとの意識など、様々な考えから結果的に運航管理者の判断・指示に従った。
・浸水量の増加とセンサーをずらしたことについて、これを知った船員の多くは運航継続に疑問を持ち始めたが、安全統括管理者や運航管理者などの陸上側では翌月以降のドッグ入渠まで持たせたいとの思惑により、運輸局報告や運航停止の判断をしなかった。
<再発防止のための施策>
・安全方針への「安全の綱領」の規定
・安全に関するアドバイザーを社外から招へいし、社員の安全意識向上の取り組みを推進する。
・安全管理規定を含む法令遵守を浸透させるため、全社員に対して定期的なコンプライアンス教育や企業倫理ホットラインの再周知を実施する。
・社長、役員および全社員が参加する「安全に関する社員総会」を開催し、「安全」をテーマに議論することにより、安全の重要性を再認識する。
・安全性向上の取り組みを推進するための新たな部署「安全推進部」を設置した。
・第三者の目から見た運航管理体制の状況を把握し、必要な是正を適切に行う。
(対象:社長、安全統括管理者、運航管理者、運航部管理職、船長、機関長、社外機関:西部海難防止協会など)
・社外機関(西部海難防止協会など)による監査の指摘事項に対する改善の実施状況は、安全推進部による安全監査で確認する。
・事象発生の報告・連絡は、速やかにグループチャットで社内関係者に情報共有するとともに、運航管理者は必要な関係機関等に連絡する。
・運航開始前までに、浸水等異常発生時の対応手順を安全管理マニュアルの緊急事故処理手順及び完全管理規定の事故処理基準に追加する。
クイーンビートルをめぐっては、運航会社のJR九州高速船が、船体の船首部分への浸水を把握しながら3カ月以上も国に必要な報告を行わず、センサーが作動しないように位置をずらしたり、航海日誌に「問題なし」などと記載してデータを改ざんしたりして運航を続けていたことが8月に発覚しました。
事態を重く見た国土交通大臣は、「輸送の安全確保に関する命令」や管理者の解任命令を出したほか、福岡海上保安部が船舶安全法違反などの疑いで捜査を進めています。
JR九州高速船と親会社・JR九州は記者会見を開き、31日、国に改善報告書を提出したこと、安全統括管理者と運航管理者を解任し新たな担当者を選任したことを明らかにしました。
報告書では、今後の改善策として、安全性向上を推進する新たな部署の設置や、全社員を対象に法令順守を徹底させるための研修を行うことのほか、JR九州による管理を強化するとしています。
一方、クイーンビートルの運休は少なくとも年内は続く見通しだということです。
改善報告書によると、「浸水隠しの原因」と「再発防止のための施策」について書かれた主な内容は以下の通りです。
<浸水隠しの原因>
・当時の社長は、浸水の報告をせず別帳簿に記録する等の対応について、船員経験が長い安全統括管理者や運航管理者からの「運航の安全には支障しない」「報告をすれば運航停止の指示は必至である」との意見を聞き、これを認める判断をした。
・その背景には、運休時の予約キャンセル対応において営業社員に負担をかけたくないとの思いもあった。
・安全統括管理者は、浸水を報告せず運航を継続するという運航管理者の意見に同調した。安全統括管理者の考えは「浸水量は船体の規模からすると非常に軽微であり、船首区画が浸水しても安全運航に支障はない」という、自身の技術的な根拠と判断のみによるもので、法令遵守の意識は希薄であったため、本来すべき意見具申ができなかった。
・運航管理者は、浸水が継続して発生しているにも関わらず、クラック(船体のひび割れや亀裂のこと)を疑わず、あるいはクラックがあったとしても喫水線(船が水上に浮かんでいるときの水面と船体が交わる線)より上だと推測し、経過観察だけでよいと考えた。また安全統括管理者と同様に、安全運航に支障はないという考えとともに、法令遵守の意識が希薄であり、報告をせずに運航を継続するという判断に至った。
・各船長は、安全運航に支障はないとの考え、法令に関わる部分は安全統括管理者や運航管理者などの陸上側が判断するものという考え、あるいは疑義はあっても会社の指示には従わざるを得ないとの意識など、様々な考えから結果的に運航管理者の判断・指示に従った。
・浸水量の増加とセンサーをずらしたことについて、これを知った船員の多くは運航継続に疑問を持ち始めたが、安全統括管理者や運航管理者などの陸上側では翌月以降のドッグ入渠まで持たせたいとの思惑により、運輸局報告や運航停止の判断をしなかった。
<再発防止のための施策>
・安全方針への「安全の綱領」の規定
・安全に関するアドバイザーを社外から招へいし、社員の安全意識向上の取り組みを推進する。
・安全管理規定を含む法令遵守を浸透させるため、全社員に対して定期的なコンプライアンス教育や企業倫理ホットラインの再周知を実施する。
・社長、役員および全社員が参加する「安全に関する社員総会」を開催し、「安全」をテーマに議論することにより、安全の重要性を再認識する。
・安全性向上の取り組みを推進するための新たな部署「安全推進部」を設置した。
・第三者の目から見た運航管理体制の状況を把握し、必要な是正を適切に行う。
(対象:社長、安全統括管理者、運航管理者、運航部管理職、船長、機関長、社外機関:西部海難防止協会など)
・社外機関(西部海難防止協会など)による監査の指摘事項に対する改善の実施状況は、安全推進部による安全監査で確認する。
・事象発生の報告・連絡は、速やかにグループチャットで社内関係者に情報共有するとともに、運航管理者は必要な関係機関等に連絡する。
・運航開始前までに、浸水等異常発生時の対応手順を安全管理マニュアルの緊急事故処理手順及び完全管理規定の事故処理基準に追加する。
日韓を結ぶ高速船「クイーンビートル」の浸水隠ぺい事件で、船を運航するJR九州の子会社は10月31日、再発防止に向けた改善報告書を国に提出しました。
クイーンビートルをめぐっては、運航会社のJR九州高速船が、船体の船首部分への浸水を把握しながら3カ月以上も国に必要な報告を行わず、センサーが作動しないように位置をずらしたり、航海日誌に「問題なし」などと記載してデータを改ざんしたりして運航を続けていたことが8月に発覚しました。
事態を重く見た国土交通大臣は、「輸送の安全確保に関する命令」や管理者の解任命令を出したほか、福岡海上保安部が船舶安全法違反などの疑いで捜査を進めています。
クイーンビートルをめぐっては、運航会社のJR九州高速船が、船体の船首部分への浸水を把握しながら3カ月以上も国に必要な報告を行わず、センサーが作動しないように位置をずらしたり、航海日誌に「問題なし」などと記載してデータを改ざんしたりして運航を続けていたことが8月に発覚しました。
事態を重く見た国土交通大臣は、「輸送の安全確保に関する命令」や管理者の解任命令を出したほか、福岡海上保安部が船舶安全法違反などの疑いで捜査を進めています。
JR九州高速船と親会社・JR九州は記者会見を開き、31日、国に改善報告書を提出したこと、安全統括管理者と運航管理者を解任し新たな担当者を選任したことを明らかにしました。
報告書では、今後の改善策として、安全性向上を推進する新たな部署の設置や、全社員を対象に法令順守を徹底させるための研修を行うことのほか、JR九州による管理を強化するとしています。
一方、クイーンビートルの運休は少なくとも年内は続く見通しだということです。
改善報告書によると、「浸水隠しの原因」と「再発防止のための施策」について書かれた主な内容は以下の通りです。
<浸水隠しの原因>
・当時の社長は、浸水の報告をせず別帳簿に記録する等の対応について、船員経験が長い安全統括管理者や運航管理者からの「運航の安全には支障しない」「報告をすれば運航停止の指示は必至である」との意見を聞き、これを認める判断をした。
・その背景には、運休時の予約キャンセル対応において営業社員に負担をかけたくないとの思いもあった。
・安全統括管理者は、浸水を報告せず運航を継続するという運航管理者の意見に同調した。安全統括管理者の考えは「浸水量は船体の規模からすると非常に軽微であり、船首区画が浸水しても安全運航に支障はない」という、自身の技術的な根拠と判断のみによるもので、法令遵守の意識は希薄であったため、本来すべき意見具申ができなかった。
・運航管理者は、浸水が継続して発生しているにも関わらず、クラック(船体のひび割れや亀裂のこと)を疑わず、あるいはクラックがあったとしても喫水線(船が水上に浮かんでいるときの水面と船体が交わる線)より上だと推測し、経過観察だけでよいと考えた。また安全統括管理者と同様に、安全運航に支障はないという考えとともに、法令遵守の意識が希薄であり、報告をせずに運航を継続するという判断に至った。
・各船長は、安全運航に支障はないとの考え、法令に関わる部分は安全統括管理者や運航管理者などの陸上側が判断するものという考え、あるいは疑義はあっても会社の指示には従わざるを得ないとの意識など、様々な考えから結果的に運航管理者の判断・指示に従った。
・浸水量の増加とセンサーをずらしたことについて、これを知った船員の多くは運航継続に疑問を持ち始めたが、安全統括管理者や運航管理者などの陸上側では翌月以降のドッグ入渠まで持たせたいとの思惑により、運輸局報告や運航停止の判断をしなかった。
<再発防止のための施策>
・安全方針への「安全の綱領」の規定
・安全に関するアドバイザーを社外から招へいし、社員の安全意識向上の取り組みを推進する。
・安全管理規定を含む法令遵守を浸透させるため、全社員に対して定期的なコンプライアンス教育や企業倫理ホットラインの再周知を実施する。
・社長、役員および全社員が参加する「安全に関する社員総会」を開催し、「安全」をテーマに議論することにより、安全の重要性を再認識する。
・安全性向上の取り組みを推進するための新たな部署「安全推進部」を設置した。
・第三者の目から見た運航管理体制の状況を把握し、必要な是正を適切に行う。
(対象:社長、安全統括管理者、運航管理者、運航部管理職、船長、機関長、社外機関:西部海難防止協会など)
・社外機関(西部海難防止協会など)による監査の指摘事項に対する改善の実施状況は、安全推進部による安全監査で確認する。
・事象発生の報告・連絡は、速やかにグループチャットで社内関係者に情報共有するとともに、運航管理者は必要な関係機関等に連絡する。
・運航開始前までに、浸水等異常発生時の対応手順を安全管理マニュアルの緊急事故処理手順及び完全管理規定の事故処理基準に追加する。
報告書では、今後の改善策として、安全性向上を推進する新たな部署の設置や、全社員を対象に法令順守を徹底させるための研修を行うことのほか、JR九州による管理を強化するとしています。
一方、クイーンビートルの運休は少なくとも年内は続く見通しだということです。
改善報告書によると、「浸水隠しの原因」と「再発防止のための施策」について書かれた主な内容は以下の通りです。
<浸水隠しの原因>
・当時の社長は、浸水の報告をせず別帳簿に記録する等の対応について、船員経験が長い安全統括管理者や運航管理者からの「運航の安全には支障しない」「報告をすれば運航停止の指示は必至である」との意見を聞き、これを認める判断をした。
・その背景には、運休時の予約キャンセル対応において営業社員に負担をかけたくないとの思いもあった。
・安全統括管理者は、浸水を報告せず運航を継続するという運航管理者の意見に同調した。安全統括管理者の考えは「浸水量は船体の規模からすると非常に軽微であり、船首区画が浸水しても安全運航に支障はない」という、自身の技術的な根拠と判断のみによるもので、法令遵守の意識は希薄であったため、本来すべき意見具申ができなかった。
・運航管理者は、浸水が継続して発生しているにも関わらず、クラック(船体のひび割れや亀裂のこと)を疑わず、あるいはクラックがあったとしても喫水線(船が水上に浮かんでいるときの水面と船体が交わる線)より上だと推測し、経過観察だけでよいと考えた。また安全統括管理者と同様に、安全運航に支障はないという考えとともに、法令遵守の意識が希薄であり、報告をせずに運航を継続するという判断に至った。
・各船長は、安全運航に支障はないとの考え、法令に関わる部分は安全統括管理者や運航管理者などの陸上側が判断するものという考え、あるいは疑義はあっても会社の指示には従わざるを得ないとの意識など、様々な考えから結果的に運航管理者の判断・指示に従った。
・浸水量の増加とセンサーをずらしたことについて、これを知った船員の多くは運航継続に疑問を持ち始めたが、安全統括管理者や運航管理者などの陸上側では翌月以降のドッグ入渠まで持たせたいとの思惑により、運輸局報告や運航停止の判断をしなかった。
<再発防止のための施策>
・安全方針への「安全の綱領」の規定
・安全に関するアドバイザーを社外から招へいし、社員の安全意識向上の取り組みを推進する。
・安全管理規定を含む法令遵守を浸透させるため、全社員に対して定期的なコンプライアンス教育や企業倫理ホットラインの再周知を実施する。
・社長、役員および全社員が参加する「安全に関する社員総会」を開催し、「安全」をテーマに議論することにより、安全の重要性を再認識する。
・安全性向上の取り組みを推進するための新たな部署「安全推進部」を設置した。
・第三者の目から見た運航管理体制の状況を把握し、必要な是正を適切に行う。
(対象:社長、安全統括管理者、運航管理者、運航部管理職、船長、機関長、社外機関:西部海難防止協会など)
・社外機関(西部海難防止協会など)による監査の指摘事項に対する改善の実施状況は、安全推進部による安全監査で確認する。
・事象発生の報告・連絡は、速やかにグループチャットで社内関係者に情報共有するとともに、運航管理者は必要な関係機関等に連絡する。
・運航開始前までに、浸水等異常発生時の対応手順を安全管理マニュアルの緊急事故処理手順及び完全管理規定の事故処理基準に追加する。