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【博多ストーカー殺人】裁判メモ(1)「結婚を考えた」女性に、男は「刃物を手に取り」「17回刺した」

事件・事故

2024/06/24 19:50

去年1月、福岡市のJR博多駅近くの路上で、元交際相手の女性を刺して殺害したとして殺人やストーカー規制法違反などの罪に問われている寺内進被告(32)の裁判が6月17日にはじまりました。法廷で明らかになった事件の経緯、被告や目撃者の証言など、TNC裁判担当記者のメモをもとに詳しく伝えます。

◆どんな事件か?
起訴状によりますと、寺内被告は2023年1月16日午後6時すぎ、JR博多駅近くの路上で、元交際相手の川野美樹さん(当時38)の帰宅を待ち伏せして追いかけ、胸や頭などを刃渡り約24センチの包丁で何度も刺して殺害したとされています。

寺内被告は2022年11月、ストーカー被害を警察に相談した川野さんの職場に押しかけるなどして、警察からストーカー規制法に基づく「禁止命令」を受けていました。

寺内被告をめぐっては、2022年8月、川野さんに声をかけた男性を殴り顔を骨折させるケガをさせた傷害の罪に関して、すでに裁判が行われていて、今年3月に有罪判決を受けています。

◆初公判はじまる(6月17日)
注目の初公判は福岡地裁で6月17日午前10時ごろ開廷。寺内被告は紺色ジャージ、下グレージーパン姿で、白いマスクをして、髪は丸坊主、うつむきがちに入廷してきました。

<裁判長と寺内被告のやりとり>
Q「おはようございます」
A「おはようございます」

Q「名前は?」
A「寺内進です」

Q「年齢は?」
A「32歳です」

Q「住所は?」
A「百道拘置所」

Q「職業は?」
A「今は無職です」

罪状認否で、寺内被告は「刺したことは間違いないですが待ち伏せしたことは違います」と殺人罪については認め、ストーカー規制法違反の罪については否認しました。

弁護側は「待ち伏せした事実はありません」「恋愛感情はすでに失っていて、それに対する怨恨はない、ストーカー規制法については無罪」と主張しました。

◆事件発生までの時系列(寺内被告)
法廷内での証言やTNCの取材により明らかになった、寺内被告の事件当日までの主な出来事は以下の通りです。

<2020年>
10月ごろ  川野美樹さんが会員制クラブで働きはじめる

<2021年>
12月ごろ  ショットバー(川野さんの店と同系列)で働きはじめる

<2022年>
4月ごろ   ショットバーに客としてきた川野さんと出会い、交際始まる

8月13日  傷害事件発生(寺内被告が、川野さんに声をかけた男性を殴り顔を骨折させる)

その後、寺内被告の自宅が何者かに襲撃される

10月下旬  川野さんの浮気を疑い、川野さんの携帯電話を取り上げたり、出勤に待ち伏せしたりする。このころ2人の交際関係は破綻。

10月24日  ストーカー規制法に基づく「警告」を受ける。

11月10日~21日 川野さんを勤務先会社で待ち伏せ。川野さんに復縁を求めるが拒まれ、川野さんの勤務先の会員制クラブに押し掛ける。

11月23日  川野さんに「恨んだるから覚えとれや」など5通のメッセージを送る

11月26日  ストーカー規制法に基づく「禁止命令」を受ける

<2023年>
1月16日   JR博多駅前の路上で川野さんが殺害される

◆2人の出会いは?(検察側の冒頭陳述)
検察側は冒頭陳述で次のように述べました。

<寺内被告と川野美樹さんの関係について>
・川野美樹さんはシングルマザーで、両親と娘と暮らしていた。2020年10月ごろから平日は人材派遣会社で勤務を始め、週末は飲食店でアルバイトをしていた。

・寺内被告は2021年12月ごろからショットバーでバーテンダーとして働き始める。ショットバーは川野さんがアルバイトしている飲食店と同じ系列店。2022年4月ごろ、ショットバーに客と一緒に訪れた川野美樹さんと知り合い、交際が始まる。その後、次第に川野さんの浮気を疑い、行動を束縛するようになる。

◆「何年掛かってでも恨んだるから」(検察側の冒頭陳述)
<殺人事件当日までの経緯について>
・2022年4年10月21日~23日、寺内被告は川野さんの浮気を疑い、川野さんの携帯電話を取り上げたり、出勤に待ち伏せしたりする。また、川野さんの携帯電話に交際中の写真や動画を大量に送信する。その中には、川野さんに不名誉なプライバシーを侵害するものも含まれていた。川野さんは愛想を尽かし、このころには寺内被告との交際関係が破綻していた。

・10月24日、川野さんは警察に相談する。警察は寺内被告に対し、ストーカー規制法に基づく警告(つきまとい行為をしてはならない)を出す。

・11月10日~21日、寺内被告は川野さんを勤務先会社で待ち伏せしたり、居酒屋で川野さんと話をして復縁を求めるが、川野さんに拒まれ、川野さんの勤務先の会員制クラブに押し掛ける。

・11月23日、午前4時10分、寺内被告は3回にわたり、川野さんの携帯電話に電話をかけるが、川野さんは着信拒否していた。

・午前2時39分~午前4時17分、寺内被告は川野さん宛てに5通のメッセージを送信した。
「おばはん警察に何言うた」
「おどれ何年掛かってでも恨んだるから覚えとれや」
「お前の家近くの喫茶店おるから6時に来いや」
「おばはんあんま舐めてると後悔すんぞ」
「わしはしつこいからの」

・午前9時30分ごろ、寺内被告は川野さんの勤務先会社に電話をかけ、従業員に「川野さんおる?あの女は人の人生めちゃくちゃにして謝罪なしか。あの舐めた女に言っとけ。」と言う。

・午前11時26分、川野さんは従業員から電話の件を伝え聞き、警察に相談する。警察は寺内被告にストーカー規制法に基づく禁止命令(反復してつきまとい等をしてはならない)を出す。

・その後、寺内被告は、川野さんから二度にわたりストーカーとして警察に被害申告されたことに立腹し、川野さんに対するいら立ちを募らせる。川野さんに会って文句を言い、謝罪をさせたい、川野さんの返答いかんによっては川野さんを殺すかもしれない、などと考える。

◆“少なくとも17回突き刺す”(検察側の冒頭陳述)
<殺人事件当日の状況について>
・2023年1月16日、寺内被告は手提げバッグに身御(みおろし)包丁を入れて自宅を出る。

・午後6時1分、川野さんは勤務先会社を退社し、家族にこれからJRで帰宅する旨のメッセージを送信する。

・午後6時3分、寺内被告は福岡市博多区の歩道上で立ち止まり、川野さんを待ち伏せする。

・午後6時6分、寺内被告は帰宅途中の川野さんを発見して近づき、川野さんの傘に自分の傘をぶつけ「おい」などと声をかける。

・その後、午後6時13分にかけて、寺内被告はJR博多駅に向かって歩いていた川野さんに約173メートル追従する。その間、川野さんに警察に被害申告したことへの文句を言い、そのことへの謝罪を求めるなどする。

・午後6時13分、寺内被告は、川野さんから「離して、しつこい。警察で話そう」などと言われて激高する。殺意を持って手提げバッグから身卸包丁を取り出し、正面に立っていた川野さんに対し、逆手に持った包丁を振り下ろして、右前胸部付近を突き刺し、その場に転倒させ、うつ伏せの川野さんの頭部、後頚部、背部等を少なくとも17回突き刺す。川野さんは多数刺切創にもとづく失血により、その場で死亡。寺内被告は犯行に用いた包丁を手提げバッグに入れ、その場から逃走する。

以上のように述べた上で、検察側は「被害者を逆恨みした悪質性が高い犯行」「法治国家への挑戦とも言える」と指摘しました。

◆「偶然が重なった」(弁護側の冒頭陳述)
一方、弁護側は冒頭陳述で、事件前に寺内被告は自宅のガスや電気が止められるほど生活が苦しかったとした上で、犯行当時「待ち伏せの事実はない」と主張しました。

<弁護側の主張>
・偶然が積み重なって起きた事件である
・待ち伏せの事実はない
・寺内被告があらかじめ包丁を準備したわけではない
・寺内被告は傷害事件後、(被害者の)男たちからの仕返しだと思う
 ⇒寺内被告の家の前で男たちが待ち伏せしているなど
・寺内被告の家が襲撃される
 ⇒バールでガラス割り侵入、荒らされる
・男たちからの仕返しと思い、命が危ないと感じて包丁2本を持ち歩くようになった
・ホテルを転々として暮らしたが、川野さんも度々ホテルへ来ていて、関係は当時は良好だった
・ホテル代で生活がだんだん厳しくなる
・1カ月ほど生活し転居先が決まる
・借金が増え、ガスや電気が止まる
・川野さんと会えずにすれ違いが増え、ストレスも増える
・川野さんの浮気を疑うようになり(携帯電話に)GPSアプリを入れる
・事件当日は、JR博多駅バスターミナルのケータイショップにケータイ代を支払いに行った
・明日からの生活をどうするか迷って立ち止まった
・支払うのをやめようと思って引き返したところ、川野さんが目にとまって傘を当てて止めた
・川野さんが警察に相談したことなどでカッとなった
・いろいろな偶然が重なって起こった事件

◆博多弁で「お前なんしようとや?」
証人として、事件現場近くのホテルの警備員が出廷し、検察側・弁護側の両方から質問が行われました。

<検察側からの証人尋問>
Q「(事件当日の2023年1月16日)午後6時すぎに目撃した出来事は?」
A「傘と傘がぶつかった音がして、男女が立っていた。女性は『びっくりした』、男性は『お前なんしようとや』と強めの口調だった。傘がぶつかったトラブルかと思った。聞こえるか聞こえないかの声で会話をして2人で一緒に歩いて行ったので、トラブルではなかったと思った。歩いて行ったのは博多駅の方向。同僚か夫婦だと思った」

Q「2人との距離は?」
A「1メートル位はあった」


<弁護側からの証人尋問>
Q「傘の音で2人を見た、それまでは見ていない?」
A「はい」

Q「男性がどこから現れたか、などは?」
A「見ていません」

Q「男性は『お前なんしようとや』と博多弁だった?」
A「私はそう聞こえました」

Q「はっきり覚えている?」
A「はい」

Q「男性の顔は?」
A「見ていない」

Q「表情は見ていない?」
A「はい」

Q「殺人があったから覚えている?」
A「それはないです」

Q「会話の内容は?」
A「聞き取れていません」

◆大阪から東京、そして九州へ
その後、弁護側からの被告人質問が行われました。

<弁護側から寺内被告への質問>

Q「出身は?」
A「大阪です」

Q「家族構成は?」
A「お母さんがひとりです」

Q「父は?」
A「ガンで8年前に亡くなりました」

Q「学歴は?」
A「中退です」

Q「高校まで行ったんですか?」
A「(高校)1年生までです」

Q「仕事は?」
A「建築業界に入りました」

Q「そのあとは?」
A「20歳くらいで夜の仕事、飲食業に就きました」

Q「仕事はどこで?」
A「大阪です」

Q「どんな仕事ですか?」
A「ダンスするバーです」

Q「大阪以外ではどこで仕事した?」
A「東京の六本木の系列のお店、あとは歌舞伎町です」

Q「九州に来たのは?」
A「コロナなので5年ほど前に鹿児島に来ました」

Q「その前は?」
A「東京です」

Q「理由は?」
A「コロナで“眠らない街”が眠るようになったので」

Q「仕事を失った?」
A「はい」

Q「どんなつてを?」
A「知り合いのつてです。キャバクラのボーイと無料案内所で」

Q「どれくらい?」
A「1年くらいです」

Q「そのあとは?」
A「大分でトンネル工事の仕事をしました。聞いていた内容と違って、一軒家に大勢で住んで、ご飯も冷たい飯でした」

Q「そのあとは?」
A「宮崎のバーに行きました」

Q「どれくらい?」
A「3、4カ月ぐらいです」

◆出会いのきっかけは「YouTube」
Q「そのあとは?」
A「福岡へ来ました」

Q「いつですか?」
A「令和3年(2021年)12月です」

Q「なぜ福岡に?」
A「九州で一番でかい街と聞いていたので」

Q「知り合いはいた?」
A「いませんでした」

Q「仕事は?」
A「案内所の人に見つけてもらいました」

Q「最初の仕事は?」
A「ダンスバーです。場所は中洲です」

Q「次の仕事は?」
A「令和4年(2022年)4月から、系列のショットバーへ行きました」

Q「どんな仕事ですか?」
A「接客業で酒を飲む仕事です」

Q「被害者(川野さん)とはいつ出会った?」
A「令和4年(2022年)4月です。(私が出ていた)YouTubeとインスタを見ていたらしく『すすだ!』と言われました」

Q「川野さんから声をかけた?」
A「はい」

Q「そのあとは?」
A「会って飲んで、一緒に寿司屋に行って、カラオケに行きました」

Q「交際は?」
A「その日からです」

Q「川野さんの仕事は?」
A「クラブの仕事と派遣業」

Q「会っていた頻度は?」
A「週2,3回です」

Q「あなたの家に泊まることは?」
A「週1,2回です」

Q「家はどこでしたか?」
A「(福岡市の)店屋町です。勤務先まで5、6分です」

Q「会うときは何をしていた?」
A「テレビを見たり、野球観戦をしたり、酒を飲んだりしました」

◆寺内被告の自宅が“襲撃された”
Q.「令和4年(2022年)8月13日の傷害事件、男性は何人グループだった?」
A.「4、5人に見えました」

Q「傷害事件後に(寺内被告は)自宅に戻ったが、(男たちが)追いかけてくるとは思った?」
A「思いました」

Q「自宅ではそのあと?」
A「家が荒らされてバールで割ったと聞いきました」

Q「窓ガラスを割られていた?」
A「はい」

Q「あなたの家(部屋)は何階ですか?」
A.「2階です」

Q「(家が)襲撃される前に不審なことはあった?」
A「2日くらい前にベランダから3人組の男がいるのが見えて、左の人がしゃがみ込んで、真ん中の人がつけてきた。最初は警察と思ったが…2日後に襲撃された」

Q「(寺内被告が).仕事に行くところをつけてきた?」
A「はい」

Q.「襲撃はどのように知った?」
A「仕事中に後輩から電話がかかってきました。警察から電話があって『(寺内被告の)家が襲撃された』と。ただ事じゃないと思いました」

Q「家の様子は?」
A「ベランダから玄関までガラスの破片だらけだった」

Q「住める状態だった?」
A「住めない状態でした」

Q「犯人は誰だと思った?」
A「傷害事件の関係者だと思った。それしかないと思った」

Q「自宅襲撃事件でどう感じた?」
A「心配になりました。家に店の名刺も散らばっていたので、店も襲われる可能性があると思いました」

◆そして包丁2本を持ち歩くように
Q「そこからどうした?包丁を持参するように?」
A「はい」

Q「何本?」
A「2本です」

Q「なぜ2本持っていた?」
A「1人1人相手するのとは違って、大勢が相手だと絶対負けるから2本必要だと思いました」

Q「どうやって持参していた?」
A「鞘に入れていた。もともとの鞘を粘着テープで巻いていた」

Q「どうやって持参していた?」
A「トートバッグに入れていました」

Q「いつも必ず持参していた?」
A「はい」

Q「包丁を持ち歩いていることは誰が知っていた?」
A「店長、社長、同僚です」

Q「なんで3人は知っているの?」
A「マンション襲撃で店の名刺が散らばっていたので、店が襲われるかもしれないと思い、店で一度説明して置かせてもらった」

Q「その時は(店長たちに)なんと言われた?」
A「『気をつけろよ』と」

◆川野さんの浮気を疑い…
Q「マンション襲撃事件後の暮らしは?」
A「ホテルで1人暮らしです」

Q「誰がホテルの予約をした?」
A「川野美樹さんです」

Q「どれくらいの期間?」
A「1カ月半くらいです」

Q「川野さんはホテルに来た?」
A「週に2~3回来ました。泊まることもありました」

Q「その時の2人の関係は?」
A「よかったです。酒・野球観戦・ドラマなどインドアです」

Q「宿泊費は?」
A「28万円です」

Q「その時の手取りは?」
A「16万円ほどです」

Q「生活はどうなった?」
A「苦しくなって、お金を借りていました」

Q「(2023年)9月下旬に引っ越した?」
A.「(福岡市の)冷泉公園・櫛田神社近くに引っ越しました」

Q「生活はどうだった?」
A「苦しかったです。水道以外止められました」

Q「被害者(川野さん)が家に来ることは?」
A「なくなりました。連絡を取らなくなりました」

Q「なぜ?」
A「お互いの生活のリズムが…」

Q「被害者(川野さん)の浮気を疑ったことはあるか?」
A「あります」

Q「令和4年(2022年)10月21日、被害者が警察に行ったようだが、時間は?」
A「朝方です」

Q「待ち合わせはしてた?」
A「していません」

Q「なぜ場所がわかるのか?」
A「(携帯電話に)GPSアプリを入れていたからです。8月13日の傷害事件のあとから」

Q「(GPSアプリは)どっちから提案した?」
A「川野さんからです」

Q「なぜ?」
A「浮気を疑わなくて済むし、傷害事件もあったからです」

Q「10月21日はどうした?」
A「(川野さんの)携帯電話をトイレに捨てた」

Q「次の日は?」
A「携帯電話を返しに行きました」

Q「その時は待ち合わせした?」
A「していません」

Q「携帯電話はどうした?」
A「返しました」

◆「関係は終わった」
Q「交際やめたいという話は?」
A「はい」

Q「関係はどうなると?」
A「終わったなと」

Q「10月24日、警察から警告を受けて関係は終わったと?」
A「はい」

Q「連絡しないようにと?」
A「はい」

Q「交際が(勤務先の)グループにバレたらどうなる?」
A「100万円の罰金です」

Q「払うのは両方?」
A「そうですね」

Q「交際を知る人はどんな人?」
A「マスターとあと1人女性」

Q「ママは?」
A「はい」

Q「社長は分かっていなかった?」
A「はい」

Q「別れてから社長と専務には?」
A「知られていました」

Q「罰金については?」
A「僕とマスターとクラブママと川野さんが100万円、書類を書いた」

Q「マスターやママも?」
A「だまっていたからです」

Q「(川野さんと)対応を話したいとは?」
A「思いました」

Q「警告が出てから?」
A「はい」

Q「(川野さんと)電話したことは?」
A「どうなんすかね」

Q「(川野さんの)会社に行ったりは?」
A「あります。『なんで警察に言うんや』と」

Q「罰金についても話しは?」
A「罰金の話しもありました」

◆LINEが来て「ふざけてるな」と
Q「11月26日、禁止命令が出て、次会ったらどうなると?」
A「(警察に)捕まると思いました」

Q「会おうとか、近寄ろうとは?」
A「ないっすね」

Q「会わないためにどんな行動を?通り道とか?」
A「会わないルートを歩いたり」

Q「命令後に連絡を取ったことは?」
A「ないです」

Q「禁止命令出てから被害者へ連絡はしていないと。逆に川野さんや周辺からLINEが来たりは?」
A「はい、11月頃に」

Q「禁止命令が11月26日だから、記憶では12月上旬頃と、どんな内容?」
A「『ハローマイフレンド』というスタンプが来た」

Q「どういったところから川野さんだと思った?」
A「画像ですね」

Q「どんな?」
A「(アカウント画像の)背景が山で、後ろ姿が似ていたから」

Q「名前は?」
A「似た名前だった」

Q「LINEが来てからは?」
A「警察と専務へ連絡しました。警察は『事情聞くんで待っててください』と。専務は『ふざけとんな』と」

Q「どう思った?」
A「ふざけてるなと」

Q「連絡取った?」
A「とっていない」

Q「なぜ?」
A「捕まるから」

Q「それくらい慎重になっていた?」
A「はい」

Q「20歳くらいから夜の水商売、店員や客との交際は?」
A「いいところと悪いところがある」

Q「客と男女関係などは?」
A「よくあること」

Q「あなた自身、客や店の女性と男女の関係は?」
A「ありますね」

Q「何人?」
A「5,6人以上は」

Q「女性には困らないタイプ?」
A「男性の女性にも好かれますけどね」

Q「これまで関係が終わった際は、振ったことが?それとも振られた?」
A「振られたのもあるし、振ったのもある」

Q「次の女性に行くまで、どれくらい気持ちの整理にかかる?」
A「半年とか」

◆“ストーカー”と申告され「ショックだった」
Q「これまで付き合った女性と川野さんの違いは?」
A「考えたことないかも…」

Q「一番良いというわけではなかった?」
A「一番かどうかはわからないが、相性はよかった」

Q「禁止命令が出た後、愛情はどうなった?」
A「どうなんでしょうかね」

Q「ほかにどんな感情が芽生えた?」
A「わかりません」

Q「川野さんが『ストーカー』と申告したことについては?」
A「ショックでした」

Q「憎たらしいという感情は?」
A「はい(あった)」

Q「禁止命令が出た後、日にちが立つにつれて感情に変化は?」
A「特に…。イラつきはあった」

Q「川野さんに対して?」
A「はい」

Q「それは禁止命令を受けたから?」
A「はい」

Q「禁止命令から1~2週間が経つにつれて、連絡も取らなくなり、イラつきの感情はどうなった?治まった?」
A「はい。日にちが経つにつれて(治まった。)」

◆“川野さん”に会うためではなく携帯ショップへ
公判2日目の6月18日も裁判は弁護側による被告人質問からはじまりました。

<弁護側から寺内被告への質問>
Q「事件前日(1月15日)から当日(1月16日)について、前日は日曜ですが仕事でしたか?」
A「休みでした」

Q「何時頃起きた?」
A「午後9時ごろです」

Q「その後は?」
A「ご飯を食べに行こうと後輩から誘われた」

Q「何時ごろ?」
A「9時半ごろです」
(弁護側からLINEの画面を見せられ、実際にご飯に行ったのは午後11時ごろから)

Q「どこへ?」
A「(福岡市)天神の居酒屋に行って相席居酒屋へ2人で」

Q「何組くらいの女性としゃべった?」
A「3,4組ですかね」

Q「帰ったのは?」
A「午前7時か8時です」

Q「事件当日(1月16日)起きたのは?」
A「(午後)5時くらいです」

Q「1月16日、仕事は?」
A「ミーティングは午後8時からです」

Q「どこで?」
A「中洲の焼肉屋です」

Q「頻度は?」
A「月に1回です」

Q「起きてからどうした?」
A「起きて用意して、ケータイ代を払おうと、その前にパチンコ店に行って2時間くらい」

Q「ということは、起きたのは午後5時より前?」
A「たぶん」

Q「パチンコ店のあとは?」
A「家に帰って寝ました」

Q「そして?」
A「起きて用意をしてケータイショップに行きました」

Q「どこのショップに?」
A「(博多)バスターミナル」

Q「何月分のケータイ代を?」
A「2カ月前の分です」

Q「いつもどこで払う?」
A「バスターミナルのソフトバンクショップです」

Q「なぜ?」
A「住所変更していないからハガキが届かなくて」

Q「家からお店はどれくらい?」
A「10分くらいです」

Q「道のりは(博多駅前の)『大博通り』ではない裏道を通っていますが、なぜ?」
A「川野さんに会わないように」

Q「道を通るとき、川野さんを意識していた?」
A「していません」

Q「ケータイショップには行った?」
A「行っていません」

Q「なぜ?」
A「Wi-Fiがあるから次の給料で払おうと」

◆アプリが示す「18時06分」
Q「アプリの履歴だと18時02分~18時06分に歩いていない時間があるが?」
A「ケータイ代を払うか払わないか迷っていました」

Q「18時06分、来た道を戻っているが?」
A「中洲の焼肉屋に早めに行って酒を飲もうかと」
(※検察側によると、犯行当日の1月16日、18時06分に川野さんを発見、18時13分に殺害した、とされている)

Q「ミーティング行こうとしたらどうなった?」
A「川野さんと会って傘を当てて『なにしとんねん』と」

Q「(川野さんと)会うことを予想していた?」
A「していないです」

Q「『なにしとんねん』と、博多弁は使わない?」
A「使いません」

Q「待ち伏せは?」
A「していません」

Q「するとしてたらどこでする?」
A「会社ちゃいますかね」

Q「ミーティングの内容は?」
A「1カ月の目標とか、何があったかとか」

Q「しなかったことは?」
A「ないですね」

Q「(ミーティングに)行かないとペナルティは?」
A「ないですけど、みんな集合しているから来いと」

Q「必ず出席?」
A「一番下なんで」

(ここまで弁護側の被告人質問)

◆「結婚を考えていた」「愛していた」が…
<検察側からの被告人質問>

Q「川野さんと交際は令和4年(2022年)4月頃から?」
A「はい」

Q「好きでしたか?」
A「そうですね」

Q「どこが?」
A「一緒にいて同じタイミングで笑えたり、気が合った」

Q「これまでの女性とくらべると?」
A「人それぞれなんですけど、中身の違う人が現れたなと」

Q「どんなところが違う?」
A「うーん…一緒にいて変えてくれる人」

Q「自分自身を変えてくれる?」
A「部屋の掃除とか、ドラマを見るのが楽しくなった。テレビとか見ないほうなんで」

Q「捜査段階で川野さんのことを『一番愛した女性』と言っていたが…」
A「はい」

Q「結婚は考えたか?」
A「考えていました」

Q「いつごろから?」
A「夏頃から」

Q「優しかった?」
A「ですね」

Q「理解してくれていた?」
A「はい」

Q「川野さんはいつでもあなたの味方とか、川野さんのことだけ信じれば良いとか、声をかけてくれた?」
A「はい」

Q「そういう言葉を聞いてどう思った?」
A「安心しました」

Q「交際当時、川野さんの位置づけは?」
A「愛していましたね」

Q「愛していた女性を殺害したことをどう思う?」
A「ショックと後悔と申し訳ないという気持ちです」

Q「事件後いろいろと考えたと思うが、どうすればよかったと?」
A「包丁を持っていかなかったらよかったなと」

Q「けんかすることも?」
A「ありましたね」

Q「川野さんの浮気を疑ったことは?」
A「はい」

Q「GPSアプリをインストールしてという話。川野さんはアプリをどうした?」
A「GPSアプリをつけよう、と言われてつけようになった」

Q「川野さんはインストールしたまま?」
A「はい」

Q「川野さんがアンインストールしたこととかは?」
A「ありましたね」

Q「いつ?」
A「『スト―カー』と言われてから」

Q「令和4年(2022年)10月22日以降?」
A「はい」

Q「その前にアンインストールしたことは?」
A「ないですね」

Q「川野さんがスマホを隠しながら使ったりとかは?」
A「ないですね」

Q「捜査段階ではスマホを隠すようになって浮気を疑うようにと言ってたが…」
A「どうなんですかね、覚えてないですけど」

Q「携帯(スマホ)を取り上げたのはなぜ?」
A「浮気してるんじゃないかと」

Q「携帯を取り上げるのと、どうつながる?」
A「携帯を見せてと」

Q「携帯を取り上げたことに対して川野さんは?」
A「携帯返してよと」

Q「どこでそのやりとりをした?」
A「博多駅の構内です」

Q「川野さんはどうした?」
A「交番に行ってくる、と」

Q「あなたも交番に行ったわけではない?」
A「はい」

Q「そのまま携帯を持って帰った?」
A「はい」

Q「何か川野さんに連絡した?」
A「お母さんに電話しました」

Q「お母さんに(電話を)かけて、川野さんに代わってもらって、すみませんが、と?」
A「はい」

Q「川野さんは何と言った?」
A「携帯を返してほしいと」

Q「『会員制クラブの従業員に返してほしい』と?」
A「はい」

Q「従業員に、というのはどうしてだと思った?」
A「わかんないですね、たぶん会いたくなかったんだと」

Q「避けられているなと?」
A「はい」

Q「直接、川野さんに会いに行った?」
A「はい」

Q「なぜ?」
A「すぐ返したかったからです」

Q「会って話したいと思った?」
A「それもあったと思います」

Q「何を話したかった?」
A「ごめんねと」

Q「許してくれると思った?」
A「その当時は許してくれると思っていました」

Q「会員制クラブに出勤するために最寄り駅で待って一緒に新幹線に?」
A「そうですね」

Q「新幹線の中で携帯を返した?」
A「そうですね」

Q「どんな話をした?謝ったりした?」
A「しました」

Q「そのあと、川野さんのマスクを取り上げて口論に?」
A「口論になりましたね」

Q「何を話して?」
A「携帯を取り上げたこととか、浮気を疑われて腹を立てていました」

Q「マスクを取り上げたのは?」
A「よく聞こえんからマスクとれや、と」

Q「マスクを取り上げられたことに対して川野さんは?」
A「なんで取ったん、と」

◆警察に相談され「むかついていた」
Q「あなたとの関係は無理だからとか、川野さんは言っていたか?」
A「言っていたと思います」

Q「そう言われて、あなた自身はどうだった?」
A「別れるのは納得できない、というのはあったと思います」

Q「令和5年(2023年)10月24日に(警察から)口頭警告を受けたことに対して、自分がやっていることがスト―カー行為だと思ったか?」
A「そのときは納得は…」

Q「ストーカー行為じゃないと思っていた?なぜ?」
A「うーん」

Q「あなたとして当時ストーカー行為とはどのようなものだと?」
A「ついてったり、無理矢理しゃべりに行ったり、向こうの嫌なこと」

Q「あなた自身は川野さんの嫌なことをしているとは思わないと?」
A「はい」

Q「川野さんが警察に被害相談したことについては?」
A「むかついていたと思います」

Q「納得は?」
A「どうなんでしょう、そうなんだと」

Q「ショックを感じたりしたか?」
A「感じてたはずですね」

Q「川野さんから裏切られた、という気持ちは?」
A「ありましたね」

Q「口頭警告のあと、復縁したいという気持ちはあったか?」
A「最初言われたときは思いましたね、思っていたと思います」

Q「昨日(17日の裁判で)、口頭警告のあと川野さんと終わったと思った、と話していたけど?」
A「思っていたと思います」

Q「どんな風に?前のような関係に?」
A「そうですね」

Q「口頭警告のあと、あなたや川野さんの勤務先に交際のことを知られた?」
A「はい」

Q「上層部に?」
A「はい、マスターとクラブママにも知られました。あとから社長と専務にも」

Q「あと、というのは?」
A「禁止命令のあとです」

Q「上司には口頭警告のあとに知られた?」
A「その前から知ってる人もいました」

Q「なぜ?」
A「川野さんがクラブママに相談して、それでバレました」

Q「警察経由でバレたことは?」
A「はい、警察から専務に連絡がきたらしくて、社長と専務が知った」

Q「専務と社長が分かったのは禁止命令の11月以降?」
A「はい」

Q「口頭警告のタイミングでは?」
A「クラブのママくらい」

Q「同一の系列店で従業員同士の交際はダメか?」
A「ダメです。100万円罰金です」

Q「男女ともに?」
A「そうですね」

Q「その男女のみ?上司は?」
A「バレた時にマスター、クラブママも黙ってたことで100万円罰金です」

Q「ママは何人かいる?」
A「そうですね、4人ほど、若ママとか」

Q「交際が分かって罰金を課されたのは、どのレベルのママ?」
A「一番上のママ」

Q「どんな風に思っていた?」
A「ふざけるなと思っていました」

Q「誰に対して?」
A「川野さんにですね」

Q「川野さんのどういったことに対して?川野さんの何が原因と?」
A「警察に電話して、警察が専務と電話したらしくて、付き合っていますって、そこでバレて」

Q「川野さんが警察に言ったことに対してふざけるなと?」
A「はい」

Q「川野さんに対して怒りとかは?」
A「ありました」

Q「ちなみに今現在はどう整理していますか?」
A「筋違いやなと」

◆ストーカー行為になると「納得できたんだと」
<令和4年(2022年)11月10日について>
Q「川野さんが働いている場所は?」
A「知っていますね。見送ったり、日常茶飯事というか」

Q「(勤務先の会社が)何階に入っているか知っていた?」
A「どうなんでしょうね、わかんないです」

Q「喫煙室にいた記憶はあるか?」
A「あります」

Q「なんで?」
A「なんで…」

Q「喫煙室は各階にありましたか?」
A「それはわかんないですけど」

Q「川野さんもタバコを吸うか?」
A「はい」

Q「川野さんがタバコを吸うと思って喫煙室に?」
A「はい、そうですね」

Q「禁止命令を受けて自分が川野さんに対してストーカー行為にあたると思ったか?」
A「その時は思ってなかったですね」

Q「警察から、これがストーカー行為だ、と説明はあったか?」
A「あったんですかね」

Q「当時はそう思っていたか?」
A「思っていたんですかね」

Q「どっちですか?納得していましたか?」
A「どうなんですかね」

Q「ストーカー行為になると納得できた?」
A「できたんだと思います」

◆川野さんに傘をぶつけて「おい!」
<事件当日 令和5年(2023年)1月16日について>
Q「この日は雨が降っていた?」
A「雨は降っていましたね。ポツポツくらい」

Q「傘をさしていたか?」
A「さしていましたね」

Q「ビニール傘?」
A「ビニール傘です」

Q「タバコを吸って待っていた、という場面があったか?」
A「ありましたね」

Q「中洲の焼肉屋に行こうとして戻ろうとしたときに川野さんを見かけた?」
A「はい」

Q「どういった姿?」
A「おじさんが前に歩いていて、その後ろにいましたね」

Q「顔は見えたか?」
A「見えましたね」

Q「見かけてどうした?」
A「『おい!』って、『お前、表歩け』って」

Q「自分がさしてる傘を川野さんの傘にぶつけたことは?」
A「ありましたね」

Q「それに対して川野さんは?」
A「『おぉ』と」

Q「昨日(17日)の被告人質問の中で、『ミコ』というアカウントからLINEスタンプが送られてきたというのは、令和4年(2022年)12月か?禁止命令を受けていた時か?」
A「はい」

Q「LINEスタンプが送られてきた、と警察に話したか?」
A「はい、電話して。(警察が)家に来ました」

Q「警察はどんな説明を?」
A「調べます、と」

Q「警察ではどんな説明をしたのか?」
A「マスターも『ミカ』やないかって、(川野さんの)源氏名なんですけど『ミカ』やないかと」

Q「警察からの結果は?」
A「はい。電話でやってないらしいので、と。いやいやいや、やっているから電話したのに」

Q「あなたが禁止命令を受ける前、川野さんは携帯を2台持っていたか?」
A「1台ですね」

Q「LINE登録するには2つの電話番号が必要だが、川野さんが2台使っているのを見たことがあるか?」
A「ないっすね」

Q「川野さん2台使っている、とあなたが知る限りはない?」
A「はい」

Q「2つの携帯番号を使いこなしていることは?」
A「知りませんね」

Q「『ミコ』のアカウント(写真)の後ろ姿、どの部分が川野さんに似ているか?」
A「マスターが完全に『ミカ』だと」
Q「そのアカウントの同じ写真を川野さんに見せてもらったことは?」
A「ないですね」

Q「アカウントの写真は菜の花畑の写真、菜の花畑にあなたと一緒に行ったりしたか?」
A「ないですね」

Q「12月に、あなたとしては、“あおられているLINEスタンプが送られた”と思った?」
A「はい」

Q「令和4年(2022年)8月19~20日、当時住んでいた(福岡市博多区)店屋町の自宅窓ガラスが割れ侵入され、警察に対して、大阪で半グレ集団に属していたこと・働いていた店で出禁になった客について(心あたりとして)話した?」
A「はい」

(ここまで検察側の被告人質問)

「ストーカーの唄を歌って」と言われ…“包丁を手に取った”

<弁護側からの被告人質問>
※事件当日について
Q「前からおじさんと女性が歩いてきて気づいた?」
A「はい」

Q「川野さんに気づいて何か思った?」
A「『なにしてんの?』という感情です」

Q「突然ことで予想していなかった?」
A「はい」

Q「声をかけて、相手はどんなリアクションだった?」
A「『おお』みたいな感じちゃいます」

Q「それで?」
A「『あのLINEなんなん』(寺内が川野さんかその周りのだれかから受け取ったと思っているLINE、送り主は『ミコ』」)、そしたら『知らんし』と」

Q「ほかには?」
A「ストーカーと周りから言われるようになったことと、『ストーカーの唄を歌って』と言われたりとか、専務から『買いかぶりすぎた』と言われたり、みんな100万円払うことになったこととか、意味分からんから」

Q「言い返した?」
A「うーん…覚えてないです」

Q「罰金については?」
A「『知らんし、勝手にしたら』と言われました」

Q「言い争って立ち止まった?なぜ立ち止まった?」
A「どうしてなんですかね」

Q「コンビニの前に立ち止まって会話した?」
A「あまり覚えてないですけど、言い合いになった。100万円の罰金やストーカー呼ばわりされた件や、専務に『買いかぶりすぎた』と言われたこと」
Q「ストーカー呼ばわりされたのは、原因は川野さんが警察へ被害申告したからだと思っていると思うが、謝罪を求めた?」
A「ないですね」

Q「罰金、ストーカーや専務のことなど川野さんへぶつけようと、謝れという気持ちでは?」
A「そうやと思います」

Q「包丁を手に取ったことは覚えている?」
A「多少覚えています」

Q「どうして手に取った?」
A「気づいたら倒れていたんで」

Q「刺したあとに?」
A「はい」

Q「手に取った瞬間の記憶は?」
A「どうなんですかね、あると思います」

Q「どういう気持ちで?何をされたから?」
A「わかんないっすね」

Q「『気づいたら倒れていた』と、その前の記憶はどこですか?」
A「・・・・・・・・(30秒~1分ほど沈黙)」

Q「コンビニ前での会話は覚えていますか?」
A「多少ですけど」

Q「どういう言い争い?」
A「だから、『ミコ』の話しとか、ストーカー呼ばわりされたこと、罰金のことや『買いかぶりすぎた』と言われたことで、どの会話が最後かはわからない(ちょっといらついた様子)」

Q「身体に触れたことは?」
A「わかんないですね」

Q「ばったり出くわした川野さんに、すぐそのことを思い返して(傘を)ぶつけたのか?」
A「その時はそうだと思いますけど」

Q「川野さんの言葉で何か覚えていますか?」
A「覚えてないです」

Q「警察について話していた?」
A「と思います」

Q「通行人に対しては?」
A「分からないですね」

Q「助けてとかは?」
A「わからないですね」

(ここまで弁護側の被告人質問)

◆「なんで110番すんの」
<検察側からの被告人質問>

Q「捜査段階で事件を再現していますが、川野さんが事件前にスマホをいじっていたと説明しているが、記憶は?」
A「110番に電話しようとしているのが見えました」

Q「直前、川野さんが自分のスマホをいじっていた画面が見えて、『11…』と押しているように見えた?」
A「そうですね」

Q「気持ちはどうなった?」
A「なんで110番すんのって思いましたね」

Q「いらだちとかは?」
A「どうなんですかね、あったんすかね」

Q「当時の気持ちはわからない?」
A「はい」

Q「当日『ストーカー呼ばわりされた』と、バーで働いているときにも?」
A「『ストーカーの唄を歌ってよ』と言われた。川野さんと同じクラブの女の子に」

Q「そんな歌がある?」
A「ありますね」

Q「歌った?」
A「歌わなかった」

Q「どう思った?」
A「ショックでしたね。ストーカーと言われたのが」

Q「川野さんへストーカーなんてしていないという気持ち?」
A「そうですね」

Q「仕事はうまくいっていた?」
A「酒を飲むまではいいんですけど、飲んだらマスターと喧嘩してましたね。マスターがテキーラ飲んでグチグチ言っていたので」

Q「電気やガス止まっていたのはいつから?」
A「覚えてないですね」

Q「令和5年(2023年)1月は?」
A「そうですね」

Q「風呂は?」
A「漫画喫茶と、自分の家の水風呂とお店のシャワーです」

Q「なんでそんな状態に?」
A「ホテル暮らしだったからです」

Q「原因は?」
A「襲撃です」

Q「川野さんのせいで電気が止まる、仕事がうまくいかない、とかは思わなかった?」
A「とくに」

Q「禁止命令は、どういうことをしてはいけないと理解はしていましたか?」
A「つけまわったり、いたずらしたり、話しかけたりですかね」

Q「禁止命令が出て、逮捕されたくないと、何をしてはいけないと思った?」
A「近寄ったりしない」

Q「事件当日、(川野さんを)見かけて近寄ったりしちゃだめ、という気持ちには?」
A「急やったんで話しかけてもうたんですけど」

Q「コンビニまで歩く途中で、まずいとは?」
A「ありましたね」

Q「タイミング的にどのあたり?」
A「その時は特に考えてなかったですね」

Q「声をかけて『ミコ』のLINEの話しをしたとき、川野さんが『警察に話せばいい』と言った?」
A「覚えてないですね」

Q「捜査段階では『警察に話したら良い』と言ったと?」
A「覚えてないですね」

このあと検察側は、事件現場付近で男が女性を襲う様子などを捉えた防犯カメラの映像を公開しました。そこには倒れ込んだ女性に対し、男が何度も腕を振り下ろすようすなどが映っていました。

<裁判メモ(2)に続く>

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