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「お前はクズ」「人格否定、殴る、蹴る…」 DV被害女性が証言 “捨てるもの多すぎる”対策に異論

暮らし

2023/03/02 19:25

「悪いけどクズの一人、お前は。何も一人じゃ生きれんくせに、人の力借りんと生きれんくせに、なんの能力もないくせに、なんの知能もないくせに…」

DV被害者の女性Aさんは、夫から浴びせられた暴言を録音していました。

さらにAさんは夫から殴られ、顔の骨を骨折し、命の危機を感じたと言います。

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2023年1月、福岡市・博多駅前での殺人事件を機に注目されたストーカー被害。

全国の警察に寄せられる相談件数は現在、2万件近くにのぼります。

しかし、その4倍以上の相談が寄せられ、ストーカーと同様、手厚い対策が必要とされる問題があります。

親密な関係、あるいは、そうした関係にあった人物から受ける暴力「DV」です。

DV問題とどう向き合うべきなのか、一人の被害女性の証言を元に考えます。

夫からDV被害を受けた女性
◆夫からのDV被害 Aさん
「婚姻期間の約2年間なんですけど、(夫から)暴言・暴力ですね。私の人格を否定するような言葉、ののしる言葉、暴力は殴る、蹴る、突き飛ばす」

証言するのは、福岡県内に住む30代の女性・Aさん。

2022年夏まで、約2年間、一緒に暮らしていた夫からの暴言・暴力に耐えてきたと言います。

◆夫からのDV被害 Aさん
「私の言動が気に入らなかったという時も、何気なく会話をしていて急にスイッチが入るということも。夫の言い分は『自分が正しくて私が悪い』。だんだんそう思い込んでいくようになりました。『助けを求めても無駄だ』というような暴言を受けていたので、結果的に逃げ出す意欲も失っていって…」
毎日のように浴びせられていたという暴言の一部をAさんは録音していました。

◆夫からの暴言(実際の音声)
「悪いけどクズの一人、お前は。えらそうにほんとやりやがってさ!何も一人じゃ生きれんくせに、人の力借りんと生きれんくせに、なんの能力もないくせに、なんの知能もないくせに、偉そうな口ばっかり叩くやつほど、自分を大事にする」

◆夫からのDV被害 Aさん
「相手をこれ(取材)によって逆なでしてしまうのかな、という不安と心配が大きかったが、DVという一括りの中にも色々あるケースの一つとして、私が受けた実態を少しでも多くの方に知っていただきたい」
◆記者リポート(2023年1月16日)
「博多駅にほど近い場所で事件が起きました。捜査員が鑑識活動に当たっています」

2023年1月、博多駅前で女性が殺害されたストーカー殺人事件。

逮捕・起訴された被告の男は女性の元交際相手で、当時、ストーカー規制法に基づく「つきまとい」の禁止命令が出されていました。
なぜ女性を救うことができなかったのか―。

Aさんは被害者を自身と重ね合わせたと言います。

Q.博多ストーカー殺人、どう思った?
◆夫からのDV被害 Aさん
「自分の身に降りかかる可能性も心配はありますし、取り返しのつかないことになってしまう前に、どうにかできなかったのかなと」

「ストーカー」と「DV」は、

・繰り返す
・エスカレートする
・急展開する場合がある

こうした性質が同じことから、福岡県警でもDV・ストーカー対策係として同じ枠組みで専従の捜査員が対策に当たっていますが―。

あのストーカー殺人事件は、現行の法制度上の「限界」を浮彫りにしました。
◆夫からのDV被害 Aさん
「(過去に)激しい口論と腕をつかまれて押さえつけられるというつかみ合いがあって、その後の通報だったんですが、私も会話ができている状態と、相手方(夫)が『夫婦げんかの一つだ』『民事不介入』と警察に言っていて、対応が難しかったんだと思う」

Aさんも警察に通報や相談をし、できる限りの対応をしてもらったものの、根本的な解決には至らなかったといいます。
◆記者
「シェルターも検討した?」
◆夫からのDV被害 Aさん
「はい」

◆記者
「シェルターを利用しなかった理由は?」
◆夫からのDV被害 Aさん
「シェルターに行って、その先がどうなるか全く想像がつかなかった。『自分が耐え続ければいいんだ』としか思えてなかった」

結局、夫から身を隠すきっかけとなったのは、夫から何度も殴られて顔の骨を3ヵ所骨折し、「命の危機」を感じた時でした。
◆記者
「これが実際の診断書?相当な痛み?」
◆夫からのDV被害 Aさん
「そうですね、はい。(夫からは)『私が転倒して顎を骨折した』という理由で(病院に)行くよう指示をされ、診察室の中で相手(夫)の目が届かないところで、(筆談で)『本当は転倒ではなく殴られたことによるけがだ』と先生に伝えました。医療機関には、隔離入院の形をとっていただき、入院中に警察にも被害届の提出ができたので、生活安全課の同行のもと退院して、その足で荷物をとりに行って別居先に移動したという流れです」
このように、被害者ばかりに負担を強いる現状のDV対策に、専門家は異議を唱えます。

◆NPO法人 福岡ジェンダー研究所 倉富史枝 理事
「逃げようと思ったら全てを捨てないといけない。仕事を捨てる、子供の学校をやめる。被害者側が捨てるものが多すぎる。本来なら加害者の行動制限をしっかりしたいところですよね」
DV防止法の、加害者が被害者に近づくことなどを禁止する「保護命令」についても、いま国会で審議されていますが、現状では、その対象が限定的かつ期間も6ヵ月で、決定までの期間も平均12.8日かかると言われています。

専門家は加害者側に法的拘束力のある再教育プログラムの仕組みや、加害者を生まないための予防教育の徹底など、『加害者側』に目を向けた対策の機運を高めることが重要だと訴えます。

◆NPO法人 福岡ジェンダー研究所 倉富史枝 理事
「加害者が変わらないとしょうがないと思う。長い目で見て、子供の非暴力教育、性教育、好きな人との付き合い方。早い内から教えた方がいい」
Aさんが今伝えたい想いは―

◆夫からの被害者 Aさん
「恐怖でなかなか行動に移せないという方の方が多いと思うんですけど、助けを求めるのであれば、勇気を出してその一歩を踏み出していただきたい。その声がたくさん広まれば、何か対策面とか、大きなことを動かすきっかけになるかもしれない。自分自身を一番大切に思ってほしい」

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